アレッポの石鹸に放射能リスクはある?科学的に徹底検証

「アレッポの石鹸は放射能汚染されているのでは?」そんな不安を抱いてネットやSNSで検索したり調べたりしている方は一定数いらっしゃいます。
アレッポの石鹸はシリア伝統の無添加石鹸として人気があり、肌や髪に優しいと愛用者も増えていますが(因みに私も10年以上愛用しています。)その一方で「放射能」「危険」といった言葉がネットで出回っているのもまた事実ですので、この記事では、なぜアレッポの石鹸に放射能リスクが語られているのか、実際にそのリスクはあるのか、さらに科学的な視点や検査データをもとに深掘りしていきます。
なぜアレッポの石鹸は放射能リスクを疑われているのか?
まず前提として、アレッポの石鹸はオリーブオイルとローレルオイル、水、苛性ソーダという非常にシンプルな原料からつくられており、製法に関しても釜炊きから熟成など非科学的な昔ながらの製法でつくられているので、いわゆるオーガニック系の石鹸だということができます。
※ アレッポの石鹸製造過程はこちらをご覧ください。
では、なぜ放射能という不安がアレッポの石鹸と結びついたのかというと以下のことがらによると考えられます。
シリア内戦の影響
アレッポの石鹸の産地であるシリアは、ご存じの通り長期間にわたる内戦が続いており、インフラ環境や安全管理体制が不安定だと云われています。このことから製造や保管の過程で国際的な基準の放射線チェックが十分行われていないのではという懸念が指摘されている。
原材料産地不明確さ
アレッポの石鹼の原材料であるオリーブやローレル(月桂樹)がどこの地域で栽培されているか明確に明記されていないので不安を感じやすくなっている。土壌や水が放射性物質に汚染されている可能性を排除しきれないというのが現状です。
近隣諸国の放射能問題
シリア周辺国には、トルコ・イラン・ロシアなど過去に原子炉事故や核実験があった国が幾つかあります。これらの国の放射能問題の影響がオリーブやローレル(月桂樹)などの農産物に及んでいるのではと懸念する方々がいる。
放射性廃棄物処理問題
シリアや近隣諸国では放射性廃棄物の管理が不十分とされる報道も過去にあり、その影響を疑う声も一定数存在する。また厚労省や農水省の資料に「中東地域からの食品・原材料への注意」が掲載されていたことも不安要素になっている。
検査体制の不透明さ
輸入時に日本国内で放射性検査をするケースはもちろんありますが、全ロッドの検査ではありません。小規模輸入や個人輸入の場合は検査をすり抜ける場合もあるので、検査体制の不透明さが不安に繋がっていることも考えられる。
SNS上の不安拡散
残念ながら陰謀論と呼ばれるものや、フォロワー欲しさにデマを流したり根拠のない情報を流すSNSユーザーを多数見受けますが、そういった界隈では「シリア産 = 危険」「中東 = 放射能汚染」という単純化された噂が広がりやすくなっており、特に日本人は東日本大震災以降放射能に敏感になっているので疑念が増幅されやすくなっています。
アレッポの石鹸に放射性物質は含まれているのか?
アレッポの石鹼に放射性物質が含まれているという科学的根拠を示すデータなどはどこにも存在していませんが、疑いを晴らすための後押しとして、アレッポの石鹼に放射性物質が含まれていない根拠を以下に示していきます。
放射性セシウムは油に移行しにくい
食品科学の分野では、放射性セシウムが植物油(菜種油やオリーブオイルなど)にほとんど移行しないことが知られており、仮に土壌や水にセシウムが存在しても、油脂部分に残る量は極めて少なく検出できないレベルであることが多いとされています。つまり、原料のオリーブオイルやローレルオイルを介して放射能が石鹸に残るリスクは非常に低いということが云えます。
※ 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構の「ナタネに対する放射性セシウムの影響と油への移行」にて確認できます。
日本で販売されている商品は放射能検査済
実際に日本に輸入されているアレッポの石鹸の中には「放射能検査済(1ベクレル以下)」と明記している販売業者も存在します。これは国の基準値と比べてもはるかに低い数値であり、日常使用で人体に影響が出るレベルではないと云えます。
肌からの被ばくはほぼゼロに等しい
放射能汚染で注意すべきは、経口摂取による内部被ばくだと云われています。食品を通じて体内に放射性物質が取り込まれることがリスクになりますが、石鹸のように外用で使う場合、仮にごく微量が含まれていても皮膚から体内に吸収される心配はほぼないとされています。
むしろ注意すべきは重金属汚染かも
メディアやwebなどで取り上げられているものではありませんので真偽の程は解りませんが、噂レベルの情報では、ある調査でイラク市場で流通していたアレッポ石鹸12銘柄のうち9銘柄から世界保健機関(WHO)の基準を超える鉛(Lead)が検出されたというものがあります。
もしこの情報が本当であれば、神経系・腎臓・造血組織に障害を与え、腹痛・吐き気・めまい・頭痛・麻痺などが起こる可能性があります。ただ、先程も述べた様に噂レベルの情報ですし、10年以上愛用している私が上記のような症状がまったくありませんので心配するレベルにはないかと思います。
安全にアレッポの石鹸を選ぶポイント
ここまでアレッポの石鹼の放射能リスク等を解説してきましたが、アレッポの石鹼を購入する際は一応以下のポイントに注意してください。
- 放射能検査済の表記を確認 日本で正規販売されている商品は検査を行っているケースが多いので放射能検査済みの表記を確認する様にしてください。
- 成分表示が明確なものを選ぶ 原料がオリーブオイル・ローレルオイル・水・苛性ソーダだけ記載されているシンプルなものを選ぶようにしてください。
- 価格が極端に安いものは避ける 今のところ目にしたことはないですが、偽造品や品質の不透明なものが出回る可能性もありますので価格が極端に安いものには注意してください。
まとめ
アレッポの石鹸の放射能リスク、ネット上の噂や過去の原発事故の影響から生まれた検索ワードの可能性が非常に高いといえます。科学的に検証すると放射性セシウムなどはオイルにほとんど移行しませんし、日本で販売されているものの中には放射能検査済の商品もありますので、アレッポの石鹼の放射能リスクの危険性はほぼないといってはずです。
重金属汚染や品質管理の問題もありますが、根拠のある公の情報は見当たりませんし、品質管理に関してはアレッポの石鹼だけに限ったものではありませんので今のところ過度に心配する必要はないといえます。どんな商品にも共通していえることですが、信頼できるルートから購入するということが大切なので特にネット上で購入する場合は十分に吟味してから購入することをおすすめします。