海でアトピー性皮膚炎の改善を考えている方へ

掻き傷がある場合や紫外線の影響などで、アトピー性皮膚炎の方が海に入るのはよくないという見解もありますが、一般的にはアトピー性皮膚炎の方が海に入るのは問題ないと云われています。
むしろ近年になって、逆に海に入った方が症状の改善に繋がるため、海水浴が推奨され始めているくらいですので、今回はアトピー性皮膚炎で悩む方のために、海(海水)で症状が改善するメカニズムや季節や地域によって海に入れない場合の解消法をご紹介していきます。
海(海水浴)でアトピーは治るのか?
実際に海水浴でアトピーが改善した例は多く、アトピー性皮膚炎に対する海水の効果は十分期待できると考えています。
皮膚科でアトピーの標準的な治療を行っている患者さんのほとんどが民間療法を併用していたという調査結果があるのですが、その民間療法と効果の有無を患者さんにアンケートをお願いした結果、1位は「海水浴」で70%の方が効果があったと答えたそうです。
「趣味で海水浴やダイビングを楽しんでいるうちにアトピーが改善していることに気が付いた」
「治療目的で海水浴を続けて見事に完治した」
といった感想をお持ちの方々もおられますし、アトピー性皮膚炎に対する海水療法は実は国の研究機関でも研究されておりしっかりとしたエビデンスもとれています。
国立研究開発法人科学技術振興機構 [JST]「アトピー性皮膚炎における塩水療法」>
アトピー性皮膚炎に海水が効果的な理由
皮膚科の患者さんが民間療法として海水浴を最も選んでいるだけあって“海”によるアトピー性皮膚炎の改善は偶然の産物ではなく、以下の様な細胞レベルで起きる改善の連鎖反応があるといわれています。
皮膚バリアの再構築
アトピー性皮膚炎の皮膚は角層が破壊されて水分が抜け、外敵が侵入しやすい環境になっていますが、海水に含まれる、マグネシウム・カルシウム・ナトリウム・カリウムが以下の様な特徴を有して皮膚バリアを再構築する因子として働いてくれます。
- マグネシウム 表皮の細胞同士を繋ぎ密着結合を強化
- カルシウム 角化細胞の分化を促し皮膚層を築き直す
- ナトリウム・カリウム 皮膚のイオンバランスと水分保持力の調整
このことから海水は破壊された皮膚構造を修復・再構築する役割を担ってくれます。
浄化と殺菌で皮膚表面の悪玉を洗い流す
アトピー性皮膚炎の肌は黄色ブドウ球菌の繁殖が異常に多く、これが炎症や痒みを悪化させる大きな原因になります。海水は天然の弱アルカリ性高ミネラル液となっており、これがブドウ球菌の膜状の防御構造を破壊させることで雑菌に対して浸透圧ストレスをかけて死滅させることができますし、洗浄力のある塩化ナトリウムが老廃物も一緒に洗い流してくれます。
さらには波打ち際の泡にはマイナスイオンが多く含まれているので皮膚表面の酸化ストレスを減らすとも云われています。
交感神経のリセット
アトピー性皮膚炎はストレス性の炎症でもあり、ストレスによって交感神経が過剰に働くと血管が収縮し免疫が暴走することで、生体アミンの一種であるヒスタミンが大量分泌されて痒み悪化という悪循環に陥ってしまうこともしばしばあります。
海に入ると冷水刺激や浮遊感、自然に還る解放的な感覚によって副交感神経優位へシフトされますし、波のリズムで内臓ストレスセンサーが穏やかに刺激されたり、太陽光がビタミンDを合成し免疫T細胞の活性化を促すのでそれぞれの相乗効果によって交感神経をリセットしたり再調律してくれます。
免疫系のリバランス
アトピー性皮膚炎はアレルギー型免疫が過剰の状態ですが、海に入ることで皮膚に小さな刺激が起きて自然免疫系である好中球やマクロファージが活性化し、炎症を抑まる方へのバランスへとシフトしていきます。
また海水中の微生物(常在菌)が肌フローラを整えて皮膚の免疫レーダーが正常化へと移行していくので、温泉療法に近い免疫の再調整が行われていることになります。
遠赤外線と運動と発汗
泳いだり波打ち際の動きなど微細な運動によって筋ポンプが働き、更には太陽光や水の照り返しによって体温もじんわり上昇するので、毛細血管まで血流アップし、これらによって汗腺が開きミネラルを含んだ良質な汗がでてきます。良質な汗には天然の抗菌ペプチドが含まれているため皮膚のバリア能力を底上げする効果も期待できます。
季節や地域によって海に入れない場合の解消法
残念ながら真冬や都会に住んでいてもアトピー性皮膚炎は起きてしまいますし、皮膚はかゆみを訴え、夜は眠れない日々が続いてしまいます。そんな海に入れない場合の繋ぎ役としておすすめしたいのが海水温熱療法です。
海水温熱療法とは海水で蒸したタオルで全身を温める療法で、天然の海水を沸騰させ100℃近い熱エネルギーを纏ったタオルを介して肌にアプローチしていくことにより…
- 海のミネラルが皮膚から経皮吸収され皮膚バリアを再構築
- 深部まで伝わる熱で毛細血管が開き血液が巡り始める
- 副交感神経が優位となり痒みの神経伝達が鎮まっていく
- 汗と共に皮脂腺・汗腺の解毒ルートが再起動
- 優しく包まれる熱で感覚神経が防御モードを解除
などの事柄が期待できます。イメージとしては皮膚と神経に海を染みこませる作業ですし、良く云えば都会にいながら海に触れることが出来るということになります。海水温熱療法がアトピー性皮膚炎に効果的なメカニズムは以下にて詳しく紹介していますのでご確認ください。
>>海水温熱療法がアトピー性皮膚炎に効果的な理由と施術変化事例<<
まとめ
痒みが辛すぎるとついつい見失いがちですが、アトピー性皮膚炎も他の様々な病気もカラダの防御反応(過剰反応)によってでているだけで決して敵ではありません、戦って治す病気ではありません。
本来の自分、自然との繋がり、皮膚が持つ本来のバランスと機能に還ることが大切で、そのために必要なものが母なる自然の大元となる海になるわけです。人間も自然の一部ですので、ありのままの自分に還る為に少し道のりは遠くなるかもしれませんが、コツコツと海活していきましょう。