海水温熱療法が痒みに対して働くメカニズム

痒みとは皮膚や神経が異常を察知したときに起こる感覚で、脳の視床下部や皮質にも影響を与える生体防御反応のひとつになります。この痒みを放置して慢性化すると、ただの防御反応では済まずストレス・自律神経・炎症・血流の悪循環へと陥ってしまうので注意が必要です。
海水温熱療法はアトピー性皮膚炎とも相性がよくて症状の改善や痒みの緩和に繋がりますが、痒み全般的にもしっかりと効果を発揮してくれます。今回はそんな海水温熱療法がどの様なメカニズムによって痒みにアプローチして緩和していくのかを解説していきます。
神経の興奮を熱がリセットする
皮膚の痒みは末梢神経のC線維が過敏になっている状態で、これが慢性的な炎症や乾燥を起こして電気的な誤発信を繰り返すことで起こります。海水温熱療法では、局所的に42℃以上の熱を加えることで、このC線維の過剰な信号発信を麻痺させる作用(熱による一時的脱)があり、このことは東京大学医学部の研究でも、42〜45℃の熱刺激が痒み神経の伝達を抑えることが報告されています。(TRPV1経路の制御)
海水ミネラルが皮膚のバリア機能を補強する
アトピー性皮膚炎や乾燥肌は皮膚バリアが壊れやすくなっており、外からの刺激(花粉・ハウスダスト・洗剤・柔軟剤・化学繊維など)が痒みを引き起こします。海水温熱療法で使用する海水には、マグネシウム・カルシウム・ナトリウムといったミネラルが豊富に含まれており、これらは角質層のセラミド産生や水分保持力を高める働きがあります。海水の成分を含んだタオルで温熱することで、熱とミネラルが同時に浸透し皮膚の自己修復力向上に繋がり、この結果として痒みの原因物質が侵入しにくい環境を整えてくれます。
副交感神経が優位になりストレス性の痒みが緩和される
痒みは単なる皮膚反応だけではなく、脳で増幅される過剰な感覚といえますが、特に不安・緊張・慢性的ストレス状態では、交感神経が優位になり痒みを悪化させてしまいます。海水温熱療法の施術中は、深部体温の上昇と同時にリラックス反応が起こりますが、これは副交感神経が優位になったサインであり、脳の痒み中枢(視床・大脳皮質)の興奮を鎮める作用があり痒みの緩和へと繋がります。
血流が促進し炎症物質排泄力向上
痒みを引き起こす化学物質(ヒスタミン・サイトカイン・プロスタグランジン)は、局所の血流が滞ることで溜まりやすくなりますが、海水温熱療法の熱浸透によって血管拡張が促進され炎症性物質を一気に排出代謝する流れができやすくなります。これによって痒みに繋がる炎症を引き起こす化学物質の排泄力の向上に繋がっていきます。
皮膚だけでなく全身の調律として作用する
痒みが強い人ほどカラダの中で未消化な熱・毒素・感情が停滞していますが、海水温熱療法は皮膚症状だけにアプローチするのではなく臓腑や感情、気の流れまでも整える包括的アプローチとなります。特に肝臓・腎臓・腸に熱を浸透させていくことは、痒みの根っこにある内臓負担・慢性炎症・腸内環境の悪化にも働きかけ根本部分のアプローチとして期待できます。
まとめ
痒みは皮膚だけの問題ではなく全身のバランスの乱れから生まれるものです。海水温熱療法は、 熱 × 海水 × 人の手 を用いた極めてシンプルで本質的な施術になり、痒みという 脳・神経・皮膚・内臓・心 を巻き込んだ複雑な現象に対して五感と自律神経に直接働きかける手段であり、一時しのぎではなく本質的な再調整こそが目的の施術といえます。