便秘は体の内と外からお腹を温めることがポイント
そもそも便秘とは?
便秘に悩まされている方は非常に多くないでしょうか?
日本では便秘の有訴者率は2016年度国民生活基礎調査によると2~5%程度と言われ、男性(2.5%)よりも女性(4.6%)に多い傾向を示しています。
そもそも便秘の定義をご存知でしょうか?
便秘に関する定義はいくつかあります。
日本内科学会によると・・・
「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」
日本消化器病学会によると・・・
「排便が数日に1回程度に減少し、排便の間隔が不規則で便の水分含有量が低下している状態(硬便)を指しますが、明確な定義はありません。問題となるのは、排便困難や腹部膨満感などの症状を伴う便通異常=便秘症」
国際消化器病学会によると・・・
「排便回数が週3回未満、排便時の25%以上(4回に1回以上)硬便、残便感・閉塞感のある頻度が25%以上」
としています。
以上から便秘の定義はあいまいで、スッキリしなければ便秘と言って良いと思います。
人間の腸には約70%の免疫細胞が集まっているため、便秘の方は便が腸に溜まることで腸内環境が悪化し病気になるリスクも上がります。
では、便秘の原因について見ていきましょう。
お腹の冷えと便秘の関係
便秘になる最大の原因が内臓の冷えです。
お腹にはたくさんの臓器が備わっています。
昔から五臓六腑と言われているように
五臓
- 心臓
- 肝臓
- 腎臓
- 脾臓(ひぞう)
- 肺臓
六腑
- 胃
- 胆のう
- 小腸
- 大腸
- 膀胱(ぼうこう)
- 膵臓(すいぞう)
がお腹の中にあり、その他にも女性ですと卵巣や子宮もあるため、お腹を冷やすと様々の病気を引き起こす原因になり得るのです。
便秘に関しては、その中でも特に腸内環境が密接に関係しています。
腸には免疫細胞の約70%が集中しており、腸管免疫と呼ばれています。
また、ヒトのカラダは約40~60兆個の細胞からできているのですが、腸内細菌はそれよりも多い約100兆個とも言われており、これらが『腸内フローラ』を作り出しています。
この腸内フローラが腸の健康に欠かせない役割を担います。
その主な役割がこちら
- 消化できない食べ物を栄養素に作り変える
- 腸内の免疫細胞を活性化させ病原菌から守る
- 腸内環境の健康を保つ
ですので、腸内フローラのバランスが崩れると悪玉菌が活性化し、便秘の原因となります。
腸内フローラについては、わかりやすいビオフェルミン製薬様のサイトがおすすめです。
お腹を冷やすことがいけない理由
「冷え」が身体に良くない理由は上述したように、非常にシンプルでお腹周りには人間の生命活動に必要不可欠な臓器がたくさんあるためです。
その内臓の中でも腸内環境の乱れが大きな原因ということはおわかりいただけたと思いますが、そもそも、なぜ冷えると腸内環境が悪化するのか?
ここをわかりやすく解説します。
なぜ冷えると腸内環境が悪化するのか?
まず、知っておいて欲しいことが人間は食事をすることで栄養を取り、カラダを作ります。
また、色々な細菌なども口から入ってきます。
食べ物を口に運び、カラダに取り入れて分解し、栄養として吸収して、不要なものを排泄するシステムを「消化器系」と呼びます。
また、様々な菌もこの消化器系によって滅菌します。
「口→咽頭→食道→胃→小腸→大腸→肛門」という経路で食べた物の分解、吸収、排泄までを行います。
また、その分解と吸収の過程で消化酵素などを分泌する腺を「消化腺」と呼びます。
これらは、「口・胃・胆のう・肝臓・すい臓」などで分布されています。
これらの内臓は平滑筋(へいかつきん)という筋肉であり、消化管、気道、血管など心臓を除く壁に分布する筋肉です。
筋肉にはもちろん栄養が必要です。
内臓は栄養が無いと回復もしなければ、働くこともできません。
そして、その栄養を運んでいるのが血液です。
そして、特に冷え性などを持っている方、カラダが冷えやすい方は血液の循環が良くないので内臓にも血液が行きづらく、食べ物の分解・吸収の過程も、栄養の運搬も必然的に上手く行われないため、内臓の機能が低下し、便秘を招くという負のスパイラルに陥ります。
つまり、お腹を冷やすことがいけない理由はこれらの消化器系を含めた内臓を冷やすことで、食べ物の分解・吸収の過程が滞りカラダに溜まりやすくなり便秘になるということです。
お腹の冷えを改善する方法
お腹の冷えを改善するおすすめの方法を2つご紹介します。
- 栄養・運動・休養のバランスを見直す
- お腹を温める
基本的なことですが基本が本当に大切です。
この2つがキッチリとコントロールして、実践できているとお腹の冷えは改善が見られます。
栄養・運動・休養のバランスを見直す
この3つは健康を語る上で絶対に外せない要素になります。
栄養は摂り過ぎても、足りなくても良くありません。
運動も激しいものをしなくても適度に行わないと良くありません。
休養もしっかりと睡眠を取り、リラックスした時間を過ごさないと良くありません。
栄養・運動・休養についてそれぞれポイントをお伝えしていきます。
栄養
食事からカラダに必要な栄養素を分解・吸収することでカラダは作られたり、回復したりします。
食事の摂り過ぎは内臓のオーバーワークに繋がり、分解しきれない食べ物は脂肪になって内臓に蓄えられたり、腸に残ったりしてしまいます。
逆に、食べる量が極端に少ないと、栄養不足によりカラダが十分に回復されず、内臓の機能低下に繋がる可能性もあります。
運動
適度な運動が必要な理由は血液の流れを良くすることで、内臓への血液の流れも促進します。
また、その影響で効率的な栄養の分解・吸収も行われ、酸素などの運搬がより良く行えるためです。
さらに、運動後はスッキリした感覚になるのでストレス緩和にも一役買います。
休養
休養の役割は自律神経のバランスを整えることにあります。
内臓がしっかり働いてくれるタイミングは副交感神経が優位に働いている時間です。
それの一番は睡眠時になりますが趣味や好きなことをして気持ちが安らいでいる時間も内臓がしっかり働くためには有効です。
仕事やストレスなどにより交感神経が優位になることが多いと内臓も働きにくくなります。
質の良い十分な睡眠、充実した休日が必要です。
お腹を温める
やはり、一番はお腹を温めることです。
上述したようにお腹にはたくさんの臓器が存在します。
一にも二にも内臓が働きやすい環境を作ることが最も効果的な方法です。
血液の流れを良くすることが内臓機能向上の近道であり、とにかくお腹を温めることが絶対不可欠です。
特に腸の辺りを温めることが腸内環境を良くするためには重要です。
ここからは「お腹を温める」ことについて詳しく書いていきます。
お腹を温めるメリット
腸内の温度は平均して36~37℃くらいに保つ必要があるためです。
この温度は体温とほぼ一緒で、腸内細菌が生育されやすく、活発に働ける温度なのです。
また、腸内細菌のほとんどは酸素があると生育されないのですが、腸内にはほとんど酸素は存在せず、腸内細菌にとっては安全かつ居心地の良い場所なのです。
よって、この温度に腸内環境を保っておくことがポイントで、これがお腹を温めると良い一番の理由です。
お腹を温めると便秘が改善する理由
お腹を温めると必然的に腸内細菌が活発に働けるようになり、また腸以外の内臓も温めるので食べ物の分解・吸収の流れもよりスムーズになります。
お腹を温めることは便秘の解消、便秘の予防として最も効果的な便秘対策の1つと言えます。
便秘解消に効果的なお腹を温める方法
まずはカラダの外側から温める方法をご紹介します。
中でもおすすめの方法をご紹介します。
- 仙骨(せんこつ)を温める
- 温冷交代浴
この2つの方法は効率的にお腹を温めることが可能です。
仙骨(せんこつ)を温める
仙骨とは骨盤の中心に位置しており、背骨の土台ともなっているのでまさにカラダの要と言えます。
背骨?仙骨?頭蓋骨?場所がよくわからない方、細かくは知らないという方も多いと思いますので簡単に背骨や仙骨について説明をします。
まず、下記の図をご覧ください。
赤い線が中心に走っている連なった骨を総称して「脊柱(せきちゅう)」と呼びます。
そして、青色になっている骨が「仙骨」です。
これら2つを合わせて「背骨」と呼び、背骨の一番上に乗っているのが頭です。
この図からを分かるように間違いなくこの3つはカラダの中心(センター)に位置しており、さらに、脚も仙骨を中心に形成されている骨盤からついています。
仙骨は上半身を支え、上半身と下半身をつなぐ極めて重要な役割を担っています。
また、仙骨は骨盤の中心にあるため、骨盤がおおっている膀胱や大腸、男性ですと前立腺、女性ですと子宮や卵巣などの臓器にも大きな影響を及ぼします。
これだけでも仙骨は非常に重要な役割であることがわかります。
ここで最も肝になるのが「頭が背骨に乗っている」ということです。
つまり、人間の全てを司る「脳」が背骨に支えられ、連結しており、色んな意味で繋がっています。
そして、脳を支えている脊柱の中には「脊髄(せきずい)」という脳から手足や内臓に情報連絡を行う非常に重要な役割を担う臓器であり、頭蓋骨に守られた「脳」と脊柱に守られた「脊髄(せきずい)」からなる全身に指示を出す神経系の中心になるのが「中枢神経(ちゅうすうしんけい)」と呼ばれます。
人間のメインコンピューターと言って良い「中枢神経(ちゅうすうしんけい)」が脊柱の中に収められているのです。
もちろん、自律神経も中枢神経によって支配されています。
自律神経は仕事や運動などアクティブな活動の時に活発化する「交感神経」と睡眠時や趣味など穏やかでリラックスした時間に活発化する「副交感神経」に分類されます。
ここまで少し長くなりましたが仙骨と背骨の重要性を理解していただけたと思います。
内臓は副交感神経優位の時に働くと説明して来ました。
中枢神経そのものの機能が低下していては自律神経もまともに働けないということです。
つまり、
中枢神経そのものの働きを良くすること=内臓の働きに深く関与する自律神経の働きは良くなる
という考え方です。
その方法が脊柱、頭を支えている土台である仙骨を温めることです。
そもそも骨は熱伝導が良く、仙骨から背骨へとその熱が伝わり温かくなることで中枢神経の活性化を狙うことが仙骨を温める大きな理由の1つです。
仙骨の温め方
仙骨付近には腹部大動脈からたくさんの血管が走っており、仙骨を温めることで仙骨付近の血液の流れを良くしてくれます。
この影響でお腹も温まり便秘はもちろん、下痢や消化不良にも効果的です。
さらには太ももを始めとした下半身の血液の流れにも良い影響を与えます。
温める方法は非常にシンプルで40~42℃程度のシャワーを仙骨に30~40秒あてるだけです。
水圧も適度な刺激となり、マッサージ効果も得られ、“八髎穴(はちりょうけつ)”というツボも刺激されるので骨盤の内側からも温める効果が得られます。
さらに、背中や太ももの裏を走っている太陽膀胱系という皮膚表面と臓器を連動させる自律神経に大きな影響を与える経絡(けいらく)も通りが良くなります。
自律神経の働きが深くかかわる内臓の働きもこれで良くなるので便秘には非常に有効です。
ついでに後頭骨という部分にも当てることで、背骨から頭までまんべんなく温めることができるのでこの2カ所を温めることをおすすめします。
仙骨、後頭骨、この2カ所は海水温熱でも熱を入れる重要ポイントです。
なかなか温まらないという方はぜひ海水温熱も試してみると良いと思います。
温冷交代浴
これも基本的には温めることなので、血液の流れを良くしていくということになりますが仙骨を温めることと違う点は全身へのアプローチと言う点です。
この温冷交代浴のメリットは全身へのアプローチなので血液の動く量が非常に多くなる点です。
方法は
- 温かいお湯に1~3分つかり
- その後に冷たい水風呂に30~1分30秒つかる
これを交互に数セット繰り返します。(体調を見ながら3~5セット程度でカラダが芯から温かくなると思います。)
効果としては温かいお湯につかることで熱を外に逃がそうとするので、血液はカラダの表層に行こうとします。
逆に、冷たい水風呂につかると内臓を真っ先に守ろうとするので、血液は内臓に集まろうとします。(カラダにとって重要な臓器を守ろうとする働きが人間には備わっています。)
これにより、血液はカラダの表層と内臓の行き来を繰り返し、全身の血液の流れは良くなり、普段は血液の流れが良くない便秘に悩まされた冷えた内臓にも血液が行き届くようになります。
ただ、銭湯に行かないとできないので、手軽に行えないのがデメリットです。
なので、普段は自宅で仙骨や後頭骨をシャワーで温め、週末に銭湯で温冷交代浴を行うという流れを実践してみると便秘解消に効果を発揮すると思います。
食事でカラダの内側から温める
カラダの中に入れるもので腸内環境は大きく変わります。
つまり、「食事」です。
カラダを温める食べものに関しては調べればいくらでも出てくると思います。
代表的なものでいうと
- キムチ
- 納豆などの発酵食品
- ジャガイモ・サツマイモなどの根菜類
- しょうが・ニンニクなどの薬味
- できるだけ温かい飲み物
- 冷たいものは避けるなど…
恐らく、ほとんどのことを実践してきていると思います。
ここでは違う観点からのアプローチをご紹介します。
薬膳を取り入れた便秘の解消法
「薬膳」という言葉を聞いたことあるでしょうか?
薬膳とは中医学をベースにした「病気にならないための食事=予防医学」のための食材ピックアップ術です。
「その人の体質にあった食事選び」と言えます。
体質には大きく2つあります。
- 熱タイプ
- 寒タイプ
熱タイプの体質
分泌物(汗、めやに、鼻水など)が少なく色が濃く粘りがある。カラダに出る症状としては、のどの腫れや炎症・吹き出物・便秘・充血・イライラなどがあります。
寒タイプの体質
分泌物・排泄物の量が多く色が薄くサラサラで症状としては寒気・ゾクゾク感・温めると楽になる腹痛・下痢・サラサラ鼻水などがあります。
食材の寒熱と五性
食材にはカラダを温めたり、冷やしたりする性質があります。
大きく分けると5つに分類され『熱・温・平・涼・寒』で「五性」と呼ばれます。
【熱】
食べたあとカラダが熱くなり、冷えを取る効果がある。
ラム肉、唐辛子、シナモン、山椒(熱はこの4つのみ)
【温】
熱ほどではないがカラダを温める。
鶏肉、牛肉、海老、黒酢、黒砂糖、みかん、たまねぎ、しょうが、ねぎ、コーヒー、紅茶
【平】
どちらの性質でもなく、毎日食べても大丈夫で食材の7割がこの平に分類される
【涼】
寒よりは弱いが身体をやや冷ます効果がある。
豚肉、ほうれん草、蕎麦、大根、チンゲン菜、きゅうり、梨、柿、りんご
【寒】
食べたあとにカラダが冷えて、熱を冷ます効果がある。
冬瓜、ごぼう、トマト、バナナ、カニ、わかめ、メロン
これらを基本的なカラダの体質と状況に合わせて選択することが薬膳です。
常に中庸(バランスの良い状態)に近づけておくことが薬膳の考え方です。
今何を食べたら良いかわからないという場合には「旬のもの」を食べると間違いありません。
寒熱両方の体質があれば「平」のもの、もしくは「熱&寒」「温&涼」を組み合わせると良いです。
となると気になるのが自分の体質がどちらのタイプなのかですよね?
あなたは「寒」?「熱」?
以下の該当する項目にチェックしてみてください。
□暑がり
□冷たい飲み物が好き
□寝つきが悪い
□よくイライラする
□ニキビや吹き出物が出やすい
□のどが渇きやすい
□便秘がち
□寒がり
□温かい飲み物が好き
□いつも眠たい
□落ち込みやすい
□肌が乾燥しやすくツヤ感がない
□あまり水分は欲しない
□軟便がち
青字の項目と赤文字の項目に分けてみましたが、
青字の項目に多くチェックがついた方は「寒」よりのタイプです。
赤字の項目に多くチェックがついた方は「熱」よりのタイプです。
ざっくりですがこのテストでどちらに比重が多いかがわかりますのでこれを参考に食材を選んでみると身体のバランスが保たれ便秘だけに留まらず、カラダの様々の不調を整えてくれます。
便秘は予防と習慣次第
最後にまとめると結局のところ、便秘は習慣に大きく左右されます。
カラダを冷やす習慣がある方、食事が偏食や過食である方、睡眠が十分に取れていなかったり、ストレスをため込んでいる方など必ず日常生活の何らかの積み重ねで招いてしまっています。
まずは、何かやることを増やすよりも今の生活を見直し、改める事が最優先です。
それらにまず取り組み、そこで初めてカラダを温めることが効果を発揮します。
バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠、ストレス解消と健康を維持する習慣をまず身につけ、日常からこまめにお腹や仙骨を温めることに取り組んでみてください。
その他にも体の冷えに関する記事もございますので、冷えに悩まれている方のお役に立てれば幸いです。